『私の自叙伝』関連5
回想や人生回顧がコミュニティーに顕著な効果をもたらすことは、さまざまな研究が明らかにしています。
人生の満足度向上
老人ホームの女性入居者を、「回想を行うグループ」、「時事問題を話し合うグループ」、「治療を行わないグループ」に無作為に分けて行った研究で、「回想を行うグループ」の人生満足度が著しく向上しました。
入居者と職員の関係向上
老人ホームの入居者に、「職員が同席する」方法と「職員が同席しない」方法で、「回想・人生回顧を行うインタビュー」と「現在に焦点を当てるインタビュー」を実施したところ、「職員が同席する」方法で「回想・人生回顧を行うインタビュー」を受けた入居者の職員に対する姿勢や考え方に、プラス方向の変化が見られました。
高齢者のうつ病改善
入居間もない老人ホームの居住者を対象に、人生回顧が臨床的うつ病の抑制に効果を発揮するか調査したところ、調査の初期段階からうつ病抑制効果が顕著に見られ、1年経過時点では更なるうつ病・絶望感の抑制効果が表れました。
見当識障害の軽減、社会交流の改善
認知症を患う高齢者でも回想を行えることを明らかにした研究があります。同研究によれば、認知症には喪失感が付随するため、特に患者にとって回想は意義があるとのことです。また、アルツハイマー病患者のグループを、人生回顧を行うグループと行わないグループとに分けて行った関連する別の研究では、人生回顧を行ったグループにおいて見当識障害の軽減と社会交流の改善が顕著でした。
入居後の見当識と能力の向上
入居間もない老人ホームの居住者に自叙伝執筆プログラムを実施した事例研究では、うつ病が軽減し、見当識と能力の自己認識が向上し、社会交流が増加しました。
目的意識・意義の向上
長期介護施設に入居する高齢者に8週間にわたるグループセラピーを実施した研究で、回顧を取り入れた治療を行ったグループでは人生の目的意識や意義に向上が見られ、同治療を行わなかったグループと比較して著しい差異が表れました。
新CMS*ガイドライン(F-248)は、人を中心に据えた個別の活動である点が特徴的です。活動スタッフは、以下のように語ります。 迅速かつ簡単に減量プログラム 「入居者へのインタビューにより、その方にどんどん近付き、理解が深まっていくのを感じます。こうして彼女の過去の話を聞かなかったら決して築けなかったであろう友情や信頼が生まれました。それは心からのもので、感動的です。その方を大切に思う気持ちが増すと思います。」 「入居者の方々をこのように色々知ることができるのは、素晴らしいと思います。例えば、この90歳の女性が以前はバスケットボール選手だったとか!彼女を見る私の目が、良い意味で変わりました。」 「私達は8〜10人で集まってLifeBioを始めたところです。まだ自己紹介の段階で、順番に話したことをスタッフが書き取っています。今後互いをより良く� �るようになれば、録音テープの力も借りながら入居者同士で記録もできるようになると思います。」 *Center for Medicare & Medicade Services(米保健福祉省の機関) |
著名な心理学者エリック・エリクソンは、人間のライフサイクルを発達段階に区分し、それぞれの段階で直面する危機に注目した研究を行いました。
壮年期(40〜50歳代):人格発達におけるこの段階の試練は、「世代性」(対「停滞」)です。「世代性」を獲得するということは、次世代を育てることです。語ることで我々は、もっとも大切なことを次世代に伝え、彼らの人生が最良のものとなるよう援助します。子孫の繁栄に関心を持ち責務を感じる段階であり、人生経験を語ることは世代性の獲得に不可欠です。
老年期(60〜74歳):エリクソンが示したこの段階の葛藤は、「自我の統合性」(対「絶望」)です。「自我の統合性」とは、秩序や意義について自分が獲得してきた容量に確信を持つことです。己の人生を充足させコミュニティーと一体化するために何が必要かを見極めなければならないため、内省を行います。そして自我の統合性が獲得されると、英知を発達させ分かち合うことが可能となります。人生経験を語ることは、自我の統合性の獲得に役立つのです。
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一方「絶望」は、自らの死に対する恐怖や、自律の喪失、愛するパートナーや友人の死によって表れます。生に関心を持つ一方で、死がやってくるという事実に直面するのです。エリクソンは、この段階では新たな知的課題を持ち、新たな役割や活動を引き受けるべきだとしています。自叙伝の執筆はこの目的に適うもので、やりがいを提供するのみならず、内省の必要性に対して機会を供します。人生回顧により、「次に追究すべきものは何か」を見つけることもできるかも知れないのです。
晩年期(75歳〜死):この段階の葛藤は「不朽」(対「消滅」)で、人生を振り返ることです。エリクソン(晩年期は、エリクソンの弟子が後に加えました。)は、人生回顧を行うことで、充足感を持って恐怖心なしに死を受け入れることができるとしています。この段階の危機をうまく乗り越えた者は、自分が成し遂げてきたことを振り返って誇りに思い、強い充足感を持ち不朽と感じます。一方この段階の危機を乗り越えることに失敗すると、人生は無駄だったと感じ後悔にさいなまれ、それが恨みや絶望、消滅へとつながります。
人生を「大局的に捉え」ながら、歳をとることに伴う肉体的変化に対処することが、人格発達の鍵なのです。そして、回想により自らの英知を認識・理解することができます。
ロバート・バトラー博士:"Why Survive? Being Old in America"(『なぜ悲劇なのか』メヂカルフレンド社)の著者。「life review(人生回顧)」という新語を50年前に作りました。それ以前の研究者や医者の回想についての認識は、老衰や認知症への踏み台に過ぎないという程度のものでした。バトラーはこの考えを否定し、回想や人生回顧を行うことは人が健康的に歳をとる過程の正常な営みであるとしたのです。現在では、多数の研究が回想や人生回顧の有用性を証明しています。
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ジーン・コーエン博士:"The Mature Mind"(『いくつになっても脳は若返る』ダイヤモンド社)の著者。回想を重要な脳活動と見なし、最近では「高齢者にとって自叙伝はチョコレートのようなもの」(自叙伝を記すと、高齢者の脳は、チョコレートを食べたときのように大きな満足感を覚える)と述べています。また、エレノア・マグワイヤとクリストファー・フリスの二人が2003年に実施した研究にも言及しています。同研究は、70歳代と30歳代の被験者の回想中の脳をスキャンし、30歳代の被験者の脳は左海馬のごく一部を使用するに過ぎないのに対し70歳代の被験者は海馬全体が明るくなることを明らかにしたのです。
アンドルー・ワイル博士:"Healthy Aging"(『ヘルシーエイジング』角川書店)の著者。高齢者に、倫理的遺言状、つまり愛する人への心からの手紙の中に、英知・価値観・人生訓も記録するよう奨励しています。ワイル曰く、「一般的な遺言状は…(中略)…死に際して物理的所有物の譲渡を記すものだが、倫理的遺言状は非物理的な贈り物に関するもので、伝え遺したい価値観や人生訓を贈るものである。人生の様々な重要時点で倫理的遺言を記し、読み返し、加筆修正し、大切な人と分かち合うべきである。倫理的遺言状を記すことで、自身の経験を整理し、自分という存在に焦点を当てることができる。後世に伝えたいと思う事柄についての精神的棚卸しである。」自叙伝は、心からの手紙となるのです。
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なぜ自叙伝プログラムを高齢者コミュニティーで実施するのか、そして何から始めればよいのか、以下にご紹介しましょう。
- コミュニティーが、自叙伝プログラムを「人間中心のケア」または「コミュニティ改革の道のり」の重要な一部として認識します。
- コミュニティーが、自叙伝プログラムを単なる活動としてではなく、入居・マーケティング・福祉、ひいては介護の一過程として認識します。職員に事前教育を実施すればプログラムは必ず成功しますし、より多くの方々にご参加いただけます。
- 高齢者コミュニティーが、一般コミュニティーを最大限に巻き込みます。家族、学生、ボランティアは容易に、このプログラムに参加し、トレーニングを受け、高齢者の語る話を書き留めることができるようになります。
- コミュニティーは、誰もが利用できる質問集、インターネット上のシステム、録音システム、一対一またはグループの活動など、あらゆる種類の媒体を用います。
- 成功の鍵は、プログラムの柔軟な施行と、経営幹部を始めとする全管理職による継続的な取り組みです。
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