ウツで悩まれているかたのために
■ウツ的症状は自己治癒のプロセス
「意味もなく悲しい」「何もする気力が湧かない」
そんな気分に突然襲われるウツ。
いま、多くの人がこの症状に悩んでいます。
ウツ的気分は、責任感や義務感が強く、
完璧主義傾向のある人が、陥ってしまいやすい症状です。
ひと言で言うなら、
「世の中をいい加減に渡っていくことができない性格」。
こういう人が精神的に行き詰り、
その葛藤を深く抱え込んでしまうと、
ウツ的症状や、それが進んだウツ病にかかってしまいます。
世の中を適当に生きている人間は、
望んでもなかなかこの病にはかかれません。
「世の中をいい加減に渡れない」性格は美徳でもありますが、
� ��かしある意味、不器用です。
仕事や人付き合い、生き方の上で、
適当に手を抜いたりすることなどできませんから、
どうしてもストレスを溜め込んでしまいます。
特に責任感や義務感の強さから、
ほどほどということを拒否してひたすら何事も頑張ってしまう、
人生の重心が前につんのめったような生き方は、
心と体に大きなストレスを抱え込みます。
その蓄積されたストレスが、このままでは精神的にも肉体的にも、
健康を脅かしかねないほど危険な状態になってくると、
私たちの心身は自分自身を安全に保つために防御態勢に入ります。
それまで頑張り屋さんだった心に急ブレーキがかかり、
頑張りたいけど頑張れないという、そんな状態を自分自身で作り出してしまうのです。
「意味 もなく悲しい」「何もする気力が湧かない」そんな感情を沸き立たせ、
今までのような行動を起こせないようにします。
万引きとうつ病
ですからウツは、頑張って必死に生きてきたその反動であり、
心身の緊急避難の症状です。
天気も晴れの日が続くと、空に水蒸気がたまって雨雲ができ、
やがて雨が降りだします。
それと同じように、心に湧いた悲しさや無気力は、
頑張っている間に雲のようにたまったストレスが降らせる
雨に相当する現象なのです。
雨も降り切ってしまえば元の晴天に戻ります。
ですから悲しさや無気力も、湧くに任せたほうがよく、
それをなんとかごまかして対処しようとしたり、
無理にせき止めようとすると、かえってこじらせたり、
長引かせたりすることになってしまいます。
ウツ気分は自分を守る自己治癒のプロセスでもありますから、逆らわずにあるがままに受け止めて、
経過させていくほうが賢明のようです。
■罪悪感や自己批判が苦しみの原因
今の行動できない状態は、
裏で潜在意識が自分の心身を安全に保つために、
それまでの生き方を強制終了させてしまった結果ですから、
行動したくてもできないようになっています。
このまま行動してしまうと、
それ以上の深刻な問題を引き起こしてしまう、
そんな状態に対して潜在意識がとった措置が、
ウツ的症状なのです。
潜在意識は心の奥深くで機能する意識で、
自律神経や内臓の活動、
意思や感情の働きなどの重要な働きを司っています。
そしてそれは催眠術の実験でも知られるように、
意思の力が及ばない強力な力を持っています。
この潜在意識の緊急措置をそれまでの頑張り屋さんの習性から、
「情けない奴だ」と罪悪感を持ち、
行動を起こせない自分を厳しく断罪し てしまうと、
本当の生き地獄が始まります。
ウツのあのどうしようもない辛さは、
実は悲しさ、無気力さという感情に由来するものではなく、
罪悪感で徹底的に自己批判、
自己否定をすることから生じる苦しみにあるのです。
ウツに悩まれる方は、
この点を認識することがとても大切です。
不安を克服する
なぜか悲しい。
やる気がまったく起こらない。
そういうウツ的気分が1週間以上続いたら、
まずは今の心の状態を振り返ってみてください。
無理に前へ前へと、
必死で突き進む生き方をしてこなかったか。
能力的にいっぱいの状態なのに、
もっとやり遂げようとしてこなかったか。
人の期待を裏切らないように、頑張りすぎてこなかったか。
責任感や義務感から、ついつい自分を自分で追い込んでこなかったか。
何か大きなことを達成したあとで、
その虚脱の空しさからウツ的な気分になっているのではないか。
こうしたことが今のウツ気分の背後に思い当たれば、
いま心身は緊急措置の状態にあるのだ、と判断したほうがいいでし ょう。
そして「なるほど自分は今まで精一杯生きて来たのだ」と自己評価して、
今の自分をあるがままに受け入れてあげましょう。
決して批判したり罪悪感を持つ必要はありません。
■ウツを抜け出す工夫
とまれ深刻なウツ的症状になったら、
医者に診てもらうのが肝要ですが、それだけでなく、
自分でその症状から脱する工夫をすることも重要です。
たとえば心いっぱいに悲しさがあふれているのなら、
思い切り泣いてみるのも効果的です。
中島みゆきの切ない曲を聴いてわんわん泣いて、
気分を立て直すという人の話を聞いたことがあります。
ジョージア州の減量のサマーキャンプ
加えて、孤立感の対処も大切です。
ウツ的症状の辛さのひとつに、
社会からの孤立感があります。
だれも自分を手助けしてくれない、応援してくれない。
そういう不安や孤独感がウツでは起こります。
こういう気持ちに襲われた場合、携帯電話を取り出して、
勇気を出して友達にかけてみましょう。
苦しくても思い切って人と話をするのが、
ウツの孤立感、孤独感を癒す道となるからです。
できれば実際に人と会って会話を交わすことをお薦めします。
その際、気分があまり重い場合は、
やたら元気な人はかえって苦しくなる場合がありますので、
人選に注意しましょう。
また孤独感にさいなまされているこ� �ような時は、
過剰に人から受け容れられることを望んでいます。
自分の欲求の度合いが過剰でないかどうか、
人と会ったあとに判断することも大切です。
またウツ的症状時は体が冷えていますので、
体をしっかり温めましょう。
体を温めると、滞っていた体の新陳代謝が促進されて、
生命力が高まります。
すると気分の高揚が起こり、
ウツ脱出のきっかけが見つかったりもします。
それにはまず、手近なお風呂の活用がお薦めです。
お風呂にゆっくり入ってくつろぎ、
心身のリフレッシュをはかりましょう。
全身浴はもちろん、半身浴、足湯や腰湯も効果的です。
近くのスーパー銭湯や温泉などに行くなどして、
お風呂を上手に楽しむのもいい ですね。
また食欲が萎えていないなら、
体を温めるおいしい食べ物を楽しみ、
体に生命力を蓄えましょう。
お風呂に入ったり、おいしいものを食べたりすると、
体が息を吹き返します。
心からではなく、体から力をつけていくのが、
ウツ的症状を改善する一番の近道です。
気力が回復するに従って、スポーツで汗を流したり、
カラオケで大声で歌ってみてください。
心のこわばりがとれて、カタルシスが訪れます。
これもまたウツ的症状の改善となります。
そして最大のウツ改善は、笑うことです。
少しでも気分が晴れたら、お笑いの番組やビデオを見たり、
寄席に行ったりと、笑う機会を増やしてください。
笑いは本当に不思議ですが、どんな薬よりも、
ウツの特効薬だと思います。
以上は私の実際のウツ的症状脱出の体験談でもあります。
五十を目の前にして、私はウツ気分に苦しみました。
医者嫌いの私は、そのとき病院にはいきませんでしたが、
結構深刻な症状だったろうなと、今になって思います。
なぜな� ��あの時は生きる気力がすっかり萎えて、
重く悲しい気持ちに覆われた状態がひと月以上も続いたのです。
(病院では2週間続くとウツ病と診断されます)
そのあまりの苦しさに、
それまで民間療法や伝承医学などを学んでいた私は、
自分の症状をなんとか改善しようと、
上記に述べた方法をあれこれ試してみたのでした。
すると薄皮がはがれるように、
少しずつ症状がよくなっていったのです。
その後ウツの専門書などを読み、自分が行った方法が、
案外的を得ていたのではないかと確信するようになりました。
私は専門家ではありませんので、その正当性を、
科学的に立証することはできませんが、
しかし昔からわが国に伝えられてきた心と体の健康法が、
ウツ脱出に功を奏したこと� ��、自分の体験で理解できました。
今、私は恩恵をうけたそうした昔ながらの知恵を絶やさないために、
社会に普及して、次世代へ残していく活動をしています。
私の体験を記したこの一文が、
ウツ気分で悩まれている方のお役に立てることができれば幸いです。
医食同源「タオの竈」 顧問
NPOおばあちゃんの知恵袋の会 理事長 村尾宏
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