対人関係を混乱させる嘘(虚言癖)
何故、人は、本当のことを言わずに嘘をついて相手を騙したり傷つけたりするのでしょうか?人生においてあらゆる種類の嘘(虚言)を一度もつかないという事はまず考えられませんが、多くの人は、同じ嘘でも『絶対に許されない嘘』と『必要悪として容認できる嘘』があると考えています。何故、人が客観的事実に基づく真実を伝えずに、意図的に嘘をついて相手を欺こうとするのかの理由には様々なものがあります。ここでは、パラノイア(偏執症・妄想症)や妄想性人格障害、反社会性人格障害、サイコパス(精神病質者)、情性欠如者(シュナイダーの定義)、統合失調症など精神医学的な精神障害による『病理的な嘘』ではなく『日常的な嘘』に焦点を当てていき ます。
どんな嘘も絶対に容認することが出来ない悪徳であるというキリスト教やイスラム教のような厳格な宗教戒律もある一方で、煩悩や利害が錯綜する世俗社会で生きる人々の多くが『嘘も方便』といった必要悪としての嘘を容認しています。『糾弾されるべき許されない嘘』というのは、"詐欺行為など自分の利益を得る目的でつかれる嘘で、相手に損害を与えるもの"や"自分に不利な行為や事実を隠蔽する目的でつかれる嘘で、相手との信頼を裏切るもの"を指しています。それよりかは許せるけれど不快感や徒労感を感じる嘘として、"自尊心や虚栄心に基づく自己顕示欲求を満足させるための嘘"があります。
いずれも利己的な目標を達成する為につかれる嘘ですが、結婚や契約、ビジネスに関する詐欺は、同じ嘘でも刑法で規定される詐欺罪に該当する嘘であり、相手に実質的な損害(金銭・感情・時間)を与えるのでその悪性は最も高いと言えます。不倫の事実を配偶者に隠そうとしてつく嘘や浮気の関係を恋人に知られまいとしてつく『自己防衛的な嘘』は、法律に違背する悪性よりも『相手の信頼や愛情を裏切る』という倫理的な悪性のほうが強いと言えるでしょう。
虚栄心を満足させる為につく嘘には、自分の家族(配偶者)や親戚の社会的地位を実際より高く見せるための嘘や、自分の地位や能力、経歴(学歴職歴)、資産状況を現実よりも優れたものとして喧伝する類の嘘などがあります。こういった誇大自己的な嘘ばかりつく相手との会話は、嘘と分かっていてもその話に付き合わなければいけない状況が多く、強い精神的ストレスを伴うものになります。しかし、いつもいつも虚栄心に根ざした嘘をついていると、相手が全ての発言を嘘と判断してしまうようになり、イソップ童話の『狼少年(羊飼いの少年と狼)』のような悲劇に陥る可能性があります。
真実を語る正直者が利益を得て、虚偽を語る嘘つきが損失を蒙るというモチーフは、聖書や経典などの宗教教義やイソップ童話の『金の斧』などに見られます。現実社会では、『正直者が馬鹿を見る』といった事態がないわけではないですが、概ね、他人を意図的に欺かない誠実な生き方をして、悪意ある他人の嘘に騙されないことが『結果としての幸せ』を導くのではないかと思います。ただひたすらに馬鹿正直に生きて、悪意ある他人から騙され利用され続けるのは賢明な選択ではありませんから、『虚言や策略を回避するポイント』を掴むのが重要になってきます。
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